静かな夜にワインとビスマルクを

静かな夜に黙々と考えたことを綴ります。政治とかアフリカとか趣味とか…。

日本の石油マーケットがレッドオーシャンになる日

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欧州景気の先行きが明るくない。

 

ユーロ圏での景況感は持ち直しに転じたものの、依然銀行の貸し出し態度などは厳格化の傾向にありIMFの予測では欧州債務危機の前の水準に戻るのは2017年になるとの見方が出ている。

 

欧州景気の回復はまだまだ時間がかかりそうである。

 

景気の落ち込みはエネルギーの需要にもろに影響が出る。さらに精製マージンの悪化によって欧州の製油所の稼働率は減少してきており、ますますエネルギー需要が減少している。

 

さて、この欧州に一番エネルギーを売り込んでいるのがロシアだ。

 

ロシアは豊富な原油・天然ガスをパイプラインを通じて安定的に欧州に供給できるという強みを通じて欧州に対してビックプレイヤーの地位を築いていた。さらにここでの外貨収入は強いロシア復活のための財源となり、プーチン大統領のリーダーシップと相まって大国としてのロシアの復活を印象つけた。

 

しかし、それも今は昔である。

 

欧州のエネルギー需要が減少したロシアは国家収入が減少。収入確保のためのバイヤーとして中国と日本の存在感は日増しに増してきている。内需が旺盛な中国はもとより、日本にとっても距離的に近く生産量が豊富なロシアの原油・天然ガスはフレキシビリティーが高いためニーズにもマッチする。実際、中東の原油からロシアの原油への振り替えを行っている元売りも存在する。

 

ロシアにとって少しずつ無視できないバイヤーに日本はなりつつあるのである。

 

しかし、これを苦虫をかみつぶす思いで見ている国がある。米国である。

 

かねてここでも指摘してきたように米国の原油は今後世界に向けて輸出されることになるだろう。先日、ホワイトハウスでエネルギー政策に関わっていた専門家から聞いた話では米国の原油輸出解禁に対する国内の圧力は日々強まっており、実施されることはほぼ間違いないとのことだった。

 

今後、原油輸出大国になるであろう米国にとってマーケットへのアクセスが戦略的に重要になってくる。既存のメインセラーとしての中東、着々と日本に対する存在感を増すロシア、これらを追随する米国と日本というマーケットを舞台に三つ巴のマーケット争奪戦が展開される日も遠くないだろう。

 

余談だが日本の中東への原油依存度は88%前後。なぜ中東への依存度がこれほどまで高いのかというと日本の石油精製設備が中東向けの装置構成だからだ。原油は取れる井戸ごとや地域によって性質に違いがある。中東向けの装置構成を即座に変えることは非常に難儀だ。

 

ところが平成22年にエネルギー供給構造高度化法なる法律が成立した。これは単純に言えばこの中東向けの装置構成を変えなさいという法律なのだが、なぜこのタイミングでの成立だったのか曖昧である。物理的に中東以外の原油調達も可能にすることでポートフォリオを組んだとも言えるし、特定の国に対してマーケットとしての門戸を開いたとも言える。

 

いずれにせよ米国が原油輸出大国として日本のマーケットにアクセスしてくる日は近いかも知れない。米国がアクセスしてきた時、エネルギー面でも日米同盟を深化させるのか、ロシアと中東を含めてポートフォリオを組むのか今後のTPP交渉の先行きにも大いに注目したいものである。