静かな夜にワインとビスマルクを

静かな夜に黙々と考えたことを綴ります。政治とかアフリカとか趣味とか…。

ウクライナはまだ滅びず

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ご存知の方も多いと思うが、ウクライナで動乱が起きた時国籍不明の部隊が展開し空港か主要施設を制圧した。覆面をした男たちが突如として軍用トラックから降りてくる様はテレビ越しに見ていても恐ろしいものがあった。

 

「欧州の穀倉地帯」という表記は地理の教科書で見かけたという方は多いと思うがあれはウクライナのことを指す。さらには鉄鉱石や石炭も産出される資源国でもある。

 

しかし、もう一つ忘れてはならないものがある。

 

核である。

 

専門家の間では覆面の部隊の正体はロシア軍の治安部隊という見方が濃厚のようだが、実はこの部隊が早期に抑えた主要施設の中に核関連施設が含まれていた。ウクライナは旧ソ連時代、核の研究施設が集中した核のメッカだ。史上最悪の原発事故の1つチェルノブイリもこのウクライナの北部に位置する。こうした平和利用の核だけではなく約5,000発の核弾頭が、旧ソ連崩壊後ウクライナに譲渡され1991年の時点では世界第3位の核保有国だったことはあまり知られていない。

 

この旧ソ連から譲渡された核兵器は、その後1996年までに自主的に放棄またはロシアに移管し現在では核拡散防止条約(NPT)の締結国になっているため核兵器は保有していない。しかし、核の製造技術を有し、更には運用できる国であることに現在でも変わりはない。

 

こうした側面を見てみるとウクライナの情勢が単に欧州の政争ではなく、世界を巻き込んだ核管理問題であったことも明らかになってくる。

 

覆面の治安部隊が仮にロシアだとするなら、早期に治安部隊を派遣し核関連施設を制圧したことは世界に核の拡散を防ぐことであり評価すべき動きなのかも知れない。

 

ウクライナの混乱に乗じて核関連施設から核の技術がテロ組織に拡散すれば人類に未曾有の悲劇を生むことにつながりかねない。もう1つの恐れるべきシナリオはウクライナが核再武装に踏み切ることである。今回、ヨーロッパ連合(EU)はウクライナの騒乱に静観を決め込んだことでウクライナ国民からの猜疑心に火をつけた。国民感情としてはロシアもEUも信じられないという思いだろう。ロシアでもEUでもなく自身で身を守るという判断として核武装は十分ありうる。現在はロシアの影響下で動乱が収まりつつあるようだが予断は許さない。

 

ウクライナが核武装に踏み切ればその他の東欧諸国もこぞって手を挙げる可能性もるだろう。核技術の輸出を通じてウクライナを盟主とする同盟国が中欧州に起こり欧州情勢が一気に不安定化する可能性も全くゼロではない。

 

米ロが足の引っ張り合いをしているように見える現状で、目下ウクライナ自身が何を考えているのか注視していかなければ外交政策を誤ることになるだろう。今こそヒロシマ、フクシマと2度の被爆を乗り越えてきた日本ができるアプローチもあるはずだ。

 

タイトルの「ウクライナは滅びず」というのはウクライナの国歌の名称なのだが、核技術を手中にしている限りウクライナは滅びることはない。しかし、核技術そのものが取り返しのつかない滅びの技術であることをウクライナ人自身も我々日本人も認識しなければならないだろう。