静かな夜にワインとビスマルクを

静かな夜に黙々と考えたことを綴ります。政治とかアフリカとか趣味とか…。

西でロシアが微笑めば…

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前回この場でウクライナが再核武装し、核技術輸出を主たる産業とし核の軍事同盟の盟主となれば東欧にも応じる国が出てくる可能性を指摘した。

 

東欧で歴史的に常に外的の侵入に頭を痛めてきたのはポーランド、チェコ、スロバキア、バルト三国、ハンガリー、ベラルーシなど東欧のほとんどの国が該当する。これらの東欧諸国は常に強い軍隊を持つことができず、強い軍隊を持つ大国が不安定化することで自国の運命も翻弄されてきた。

 

東欧の一部はEUに加盟したが、加盟したことで自衛力が高まったわけではない。EUに加盟することでEU諸国から攻撃を受けることはなくなったがロシアをはじめ東方には常に火種にさらされている。

 

大陸国家の独特の危機感は自国を守るのは自国でしかないというものではなかったか。だとすれば他国に頼らない自衛力は今でも生々しいまでの課題なはずだ。

 

一方のロシアにとってウクライナは生命線であり、ウクライナを失うことはヨーロッパに対するパイプラインなどのアクセスも失うことを意味する。

 

ウクライナを盟主とする東欧核武装軍事同盟が結成されてしまうと、ロシアは完全にヨーロッパへのアクセスを失い天然ガスなどのヨーロッパに対する販売が出来なくなる。現在、ロシアの原油・天然ガスのほとんどがヨーロッパに出荷・販売されていることを考えればこの不測の事態で最も不利な立場に追い込まれるのはロシアということになる。

 

これまではガス料金の不払いを理由にパイプラインのガス供給を停止したりパイプラインの支配権を持っていたロシアだが、立場を逆手に支配権をウクライナに奪われるという事態も考えられるだろう。

 

核武装したとなればロシアも下手には手が出せないし、核兵器使用の可能性もあることから国際機関や欧米諸国からの圧力が加わることも考えられる。そうなればロシアの復権を快く思わない米国は国際機関に果敢に圧力をかけ生かさず殺さずの状態にロシアを追い込むだろう。ウクライナが核武装した時点で既に米露の闘争を超えた国際問題に発展するため欧米がロシアの生殺与奪の権利を持つことになる。

 

西方においてロシアはますます孤立を深め、ロシアの東方シフトが加速する可能性がある。

 

近づくのは大国である中国と日本だ。特に、対米国などの共通利益が多い中国とは最接近する可能性がある。ロシアと向き合う上で考えなければならないのは3つの顔を持っているということである。ロシアは西の顔(ヨーロッパとしての顔)、中央アジアの顔、東の顔(アジアとしての顔)を持っており、東が西に西が東に影響を及ぼしてきた歴史であった。

 

ロシア革命の要因の1つが日本の明石機関によるものであったことは今では広く知られているが、西で起こったロシアの騒乱が極東での戦争にも波及したわけだ。連合艦隊の活躍もあって日本は物理的にも心理的にもロシアを相手に勝利を収めることに成功した。

 

今回も西のウクライナ問題が東ロシアの極東情勢に大きな影響を及ぼすことは十分考えられる。東でロシアが中国に接近した場合、中国がさらに極東で野放図に動き回ることになるだろう。中国の対日本だけでなく対東南アジアの政策についてもロシアが追認する可能性が高い。

 

日本にとってロシアは中国の抑止力として極東で機能してもらうのがベストと筆者は考えているので日本にとっては必ずしも好ましい環境にはならないだろう。中国もロシアに対して丸腰になることはないが、ロシア以外の極東情勢に注力することが可能になる。

 

ロシアは西で微笑めば東で強面になり、東で泣けば西で微笑む(我が国にとっては微笑みにならないが)。外交で顔色伺いは軽蔑されることかもしれないが、ロシアの顔色は日本の顔色も決めることを肝に銘じておかなければと感じたのは筆者だけではないだろう。