静かな夜にワインとビスマルクを

静かな夜に黙々と考えたことを綴ります。政治とかアフリカとか趣味とか…。

オリンピックと地方分権

 

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日本はこれから人口が縮小していく。2050年には人口の4割が65歳以上になるといわれ、高齢化とともに生産人口が縮減していく。

 

そんな中、2020年の東京オリンピックが唯一の明るい話題と言いたいところだがこのオリンピックも怪しい。

 

オリンピックが決まった途端、試算とは打って変わって建設費が跳ね上がるスタジアムなど税金を食い物にするような動きも目立つ。この国の財政状況は凄まじいペースで悪化の一途を辿っておりこうした贅沢も許容されなくなる日は近い。こうした贅沢を続けて自己破産をするのか、倹約して国家としての持続性を図るのか選択肢は決して多くない。


このオリンピックの影響は国庫の財政状況への影響だけではない。

 

2020年までに建設ラッシュなどがあいまって首都圏の雇用者数は増加するだろう。地方部では慢性的に雇用状況が悪化しており地方で職にあぶれた人間は首都圏に大挙して押し寄せることになる。

 

しかし、オリンピックが終わった2020年以降こうした首都圏を中心とする雇用バブルは弾ける。日本人は勤勉だから仕事があるうちはどんな通勤環境、生活環境でも我慢して生活するだろう。仕事が一度無くなった後、東京に住み続ける可能性は低い。


現在ですら土日の昼の山手線などは乗れたものではないし、通勤ラッシュひとつとっても首都圏の受容可能な人口キャパシティーは超えてしまっているとみるべきだろう。


そうすると2020年後には首都圏に集まった労働人口が仕事を求めて漂流することになる。この漂流する労働人口は良好な生活環境と雇用のあるところに集まるとみるのが妥当だろう。


そうした時、首都圏以外の自治体で仕事と住みやすさのあるところがこの労働人口を獲得することになる。


地方部は現在でも「人財」の獲得が急務な状況であることから、「人財」の集まる地方とそうでない地方によって勝ち負けが如実に表れてしまうのは明らかだ。


地方自治体にとっては2020年以降、住みやすさと雇用が確保できるかで生き残りが決まってくると筆者は考えている。


そうはいっても地方に住みやすさはあっても、雇用を創出するのは困難だ。これまでも地方における雇用の創出に政府が取り組んできたがなかなか成果は上がっていない。

 

そこで筆者が注目するのはテレワークである。


このテレワーク、ITインフラの整備によってどこでも仕事ができるという仕組みで政府も昨年の6月に発表した日本再興戦略でも推進すると言及している。


大企業を巻き込んでテレワークを推進すれば、東京での仕事を日本の各地方都市にいながら行うことができるようになる。そもそも東京にいなければできない仕事など最近は少ない。


筆者もカナダに駐在していたことがあったが、カナダでも東京の業務を行うこともあった。IT環境次第で、もはや国境を越えて仕事が選択できる時代なのだ。


大企業にとっても首都圏に住む社員には都市手当てを支給しているだろうからこのコストを抑えることができる。


従業員も都市手当て分は収入は減ることになるが、その分物価の安い日本の地方都市で生活すれば所得水準を下げることなく生活することができる。むしろ地方都市だと朝から隣のおっさんと吊革の取り合いで揉めることなどない。はるかに住みやすい環境で働くことができストレスなども軽減される。


さらに地方都市にとっても首都圏の所得水準の人たちが地方にお金を落としていくことになるので経済が活性化される。


このテレワークを通じた職の分散こそが地方分権の一里塚になるのではないかと筆者は考えている。


地方に人を集め、地方のポテンシャルを最大限に引き出し、新しい試みを地方から創出すること。まずは地方に「人財」が集まることなし真の地方分権などはあり得ないだろう。


今からの取り組みが2020年以降の自治体の命運を決めると考え、地方への移住を検討している人もおられるのではないだろうか。