静かな夜にワインとビスマルクを

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天秤は西に傾く?!〜今世紀最後のフロンティアの死角「西アフリカ」

日本企業のアフリカ進出はこれまで東側に偏重してきた。

 

早い段階の進出はケニアやタンザニアなどがあげられる。こうした東アフリカ諸国は旧イギリス植民地ということもあって英語を話せる人が多い。言語が後押しになって日本企業の進出が進んだ。古くは日本航空のナイロビ支店などが進出していたが、現在ではケニアのジョモケニアッタ農工大学と日清が合弁で即席麺メーカーを立ち上げ挑戦を続けている。

 

モロッコやモーリタニアなどはタコの調達・加工拠点としてマルハニチロなどがすでに進出している。エジプトなどでも考古学ブームによって日本人向けに観光開発が行われてきた。北部のマグレブ地方も日本企業にとっては馴染みのものと言える。

 

しかし、今世紀最大のフロンティアと言われたアフリカでも日本企業がなかなか進出できていない地域がある。

 

それが西アフリカ諸国である。

 

ガーナやナイジェリアは前述のように英語圏ということもあってすでに進出している日本勢もいるが、その他の西アフリカ地域は日本勢にとっても未知の土地という印象のようだ。

 

こうした西アフリカ地域はこれまで経済発展が十分に展開されてこなかった。さらには旧フランス植民地の名残もあってフランス語が公用語として使用され言語の面でも日本勢にとってはハードルが高いとされてきた。

 

ところがこの西アフリカ地域にも近年変化が見られる。先月末、日本において西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の主催で日本企業へ投資を呼び込むフォーラムが行われた。バシール・ママン・イフォECOWAS投資開発銀行頭取やベナン共和国リオネル・ザンスー首相が来日し、日本企業への期待感を語った。

 

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*リオネル・ザンスーベナン共和国首相、ベナン共和国商工会議所会頭、ゾマホン駐日ベナン共和国全権大使との昼食。中央が首相。

 

現在、ECOWASにはナイジェリア、セネガル、ガーナ、マリ、ギニア、ベナンなど西アフリカ諸国15か国が加盟し将来的な域内関税の撤廃や共通通貨の導入、移動の自由などを公約に活動している。ECOWASでは2014年に域内GDPは7,250億ドルに達し、域内の経済成長率は6.3%を記録した。

 

域内の経済は確実に成長している。中間層は拡大し、ナイジェリアでは5,000万人の中間層が誕生したと言われた。コンシューマーファイナンスも充実し域内には欧米の年金基金などを原資にした資本が流入を続けている。貯蓄率については約20%の上ったとの報告もあげられフロンティアの死角を印象付けたと言える。

 

こうしたポジティブな情報に比較すると日本企業の出足は鈍い。

 

フォーラムに出席していた大手商社の幹部はその理由のひとつにフランス語という言語の壁をあげた。

 

これに対してアフリカサイドの反応は非常に冷淡なものがあった。フランス語という言語の壁は日本人が努力していく他ないからだ。英語圏のナイジェリアではフランス語は第二公用語と決定されるなどアフリカの中でも言語の壁への挑戦は続いている。日本人にできる努力ではなくアフリカサイドで何をすべきかを具体的に教えて欲しいという発言も聞かれ、日本企業との距離感は平行線と感じられた。

 

アフリカにおいては先の記事にもあげたが数字を拾うということが非常に困難だ。今回のフォーラムで見られた発言も多くは南アフリカのスタンダード銀行などの資料に依拠するものであり、政府の公式なデータではない。こうした政府首脳が発言する数字すらも正確かどうかが怪しいことは確かだが、日本人自身も現地に適応する努力が求められている。すでに西アフリカ、特に先般仕事で訪れたガーナではインドネシアの即席麺メーカー「インドミー」が市場を席巻していた。この事態は日清の担当者も認識しているようで、西アフリカに日清の進出の余地はないと社内では判断しているとの悲しいコメントも聞かれた。

 

アフリカサイドから出てくる情報を鵜呑みにすることは非常に危険だが、日本企業はこれまで自らに都合のいい環境でばかり商売をしてきたのではないか。自らに都合のいい市場でのシェアがどんどん新興国に追い上げられている今、敢えて都合の悪い環境に飛び出す必要がある。

 

先の大戦で日本軍が犯した致命的な失敗を組織論・社会学の観点でまとめた「失敗の本質」にはこうある。

 

適応は適応を締め出す。

 

自らに都合のいい環境でしか商売してこなかった日本企業に求められているのは適応できない現地に適応し、挑戦していくということではないだろうか。